Hi,あきしま第41号
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5たとえば暴力を受けていない状態をゼロとし、暴力を受けている状態をマイナス五十とします。このような設定をするならば、暴力を受けている状態に比べて暴力を受けていない状態はプラス五十ですね。これをDV被害者は幸せと感じるわけです。昨日まで自分を殴っていた相手に「ありがとう、我慢してくれて!」と感謝すらします。プラス五十どころか、百にもなってしまうかもしれません。この平和と幸福を手離したくないと思ったとしても無理はないでしょう。辛い話です。愛されていると思いたい。あるいは何とか努力して相手と親密になりたいと思う。悲しいことですが、そう思った方が希望が持てるのです。自分が悪いところを改めさえすれば解決すると思ってしまうのですから。親密な関係というのは、これだけのダークサイドを持つのです。自己評価を低くしてしまうことも、DV被害に遭いやすい条件になるかもしれません。たとえば親から「お前は可愛くない」「お前は頭が悪い」などと言われ続けていたら、その子の自尊心は傷つきます。逆に、「うちの子が一番可愛い」「うちの子が一番大切」と、可愛がられ続けていたとしたら、はた目には親バカかもしれませんが、子どもの心には、自分を大切にする気持ちが根づくでしょう。自尊心を傷つけられそうになったとき、「やめて!」とはね返す力がドンと出るようになるわけです。自尊心をしっかり持つことで、DVの罠にはまらないようにすること、あるいはDVから自由になることは決して不可能ではないのです。DV被害からの自由DV被害は、誰か第三者が気づいてあげることが望まれます。たとえばありふれた夫婦の日常会話の話でも、なんとなく意味がぼんやりしていたり、内容におかしいところがあったら、それを見逃さないことです。第三者の視点が当事者二人の異常な世界に入ったときに初めて被害者自身がハッとすることもありうるのです。「大丈夫?」と心配されるだけでも目覚めることがあります。ただし、この目覚めが実際に被害から逃れるための行動につながるまでには、ずいぶん時間がかかることもあります。被害者の気持ちは複雑です。「私は何の意味もない暴力に耐えていただけだったんだ」――そう考えてしまったら、それまでの年月は、まったくの無駄になってしまう。それが怖くて、それ以上の行動に踏み切れないこともあります。だから被害者の相談に乗る場合には、注意したいことがあります。それは、相談に乗る人にも相当の忍耐が必要だということです。第三者が介入する意味は大きい。けれど、被害者が実際にDVから逃れるのは、はかばかしく進まないことも多い。そうしたことを知っておいていただきたいのです。「なぜ逃げないの?」などと言って、被害者を余計に追い詰めたりしないように注意しながら、気長に関わり、必要に応じて支援するようにしてください。一方、不幸にして現在被害に遭っている当事者にお伝えしたいことは、次のようなことです。第三者の視点が入るなどして、「これって、おかしいのかも」という気づきがあったなら、まずはそのような自分の内なる声に耳を貸すことがまず第一歩になります。またそういう第一歩を得るためにも、誰かに相談するという選択肢を忘れないでください。ただし、相談相手によっては、「あなたにも改めるべきところはあるのでは?」などといった役に立たない意見を言われてしまうかもしれません。その場合は、そこで反省するのではなくて、別のよい相談相手をなんとか探して下さい。また、そもそも何が自分にとって一番大切なのかを自分に問いかけてみましょう。これから先の残された自分の人生を想像してみましょう。たとえば、たった一度きりの人生の中で、もっとやりたいことがあったのではないでしょうか。それをするチャンスは、もう二度とないかもしれません。そう考えると、DV加害者への執着は薄れるのではないでしょうか。「逃げたいのはやまやま。でも逃げたら、子どもやほかの家族に迷惑がかかる」――そのような厳しい事情もあるかもしれません。確かに難しい問題です。それでも、本当に大切なもののために、何かよい方法があるかもしれません。今すぐには無理かもしれませんが、自分を犠牲にして人のことを優先してしまうような考えに対しては、少し距離をおくようにしてみてください。言ったり言われたりしていませんか?――DVワード――・「誰のおかげで暮らしていられるんだ」・「稼げないくせに」・「何にもできないくせに」・「飯一つちゃんと作れないくせに」・「お前は頭がおかしい」「馬鹿だ」・「ブス」「誰もお前なんか相手にしない」・「お前みたいなのと一緒にいてやれるのは俺だけだ」・「君がいなくなったら死ぬ」*上記の言葉を一つでも言ったり言われたりしていたら、DVの可能性があります。第三者に相談しましょう。あなたはだいじょうぶ?

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