平成25年度環境学習講座第5回
更新日:2017年4月14日
第5回環境学習講座
平成25年11月16日(土曜日)(午後1時から午後4時50分まで)
保健福祉センターあいぽっく 視聴覚室
- 講義・観察:昭島のふるさとの緑
- 講師:国際生態学センター 矢ケ崎 朋樹氏
- 講座のねらい:歩きながら、昭島市の自然を観察し、現存する緑について考える。
(講座要旨)
【フィールドワーク】
1 福島町1丁目付近の崖線(都保存林から稲荷神社まで)→森林の形をなさない例
- 注:広福寺の大松: 樹齢550年、幹周り約3メートル、樹高20メートルの昭島市指定天然記念物を観察
- 注:稲荷神社の大ケヤキ: 樹齢400年、幹周り約7メートルの昭島市指定天然記念物を観察
2 大神町4丁目付近の崖線(昭島市保存林)→ほぼ森林の形を保っている例
- 森林の形態(高木層、亜高木層、低木層、地衣植物)、木の種類、管理の仕方、台伐萌芽、伐採萌芽、腐朽菌の影響等の説明、質問に答えながら進められた。
【講義】
- 昭島市のみどり率は、43.8%であるが、これは河川、公園等が入っているので現実と違う。植物の覆っている樹林地は、2.3%となり、ケニアのような所となる。
1 みどりの生態を知る
- 現存植生図、1984年その当時の状況になるが、現在も似た状況になるかもしれない。
- 潜在植生図(人の影響をすべて停止した場合)台地はシラカシ群生地となる。
- 段丘と段丘の間には湧き水もあり、ケヤキ、ムクノキ等が群生する地もある。
- 地下水の高い地域はハンノキ群落となる。
2 みどりの生態を評価する
- 植生自然度(自然性から見た緑の評価)1から10まである。
- 植生自然度が高いものは保存すべきというのは間違いで、自然度が低くても保存すべきものがある。
- 有用性による評価もある。
3 管理(植生管理)する
- 昭島は地下水を水道に用いているため、水源涵養、水質の浄化が重要であり、浸透能の大きい樹林が必要である。
- 神奈川県には、広葉樹林整備指針というものがあり、公園型、生産型、林地保全型、修景景観型、防災型に分けその狙いにあった管理を決めている。
斜面林の現状と植生管理(レジメより)
- 崖線に残された昭島市内の森林の多くは、斜面・湧水地の安定や土壌流失の防止など、環境保全の役割を果たしている。
- 斜面に残された森林は、人為的かく乱に対して極めて脆弱であり、ひとたび植生管理の方法を誤ると土壌流出や斜面崩壊を招く恐れがあるため注意が必要である。
- 防災・環境保全をねらいとした斜面林管理では、安定した地上部、根系の育成を促すため、根系支持力や土壌緊縛力のある植物を主体とする多層な森林植生を維持・誘導することが望ましい。
- 斜面林管理における「強剪定」は個々の樹林の樹勢を一時的に弱めるだけでなく、腐朽菌の侵入リスクを高めるなど、将来の生育上悪影響を及ぼすこともある。管理作業を進めるにあたっては個々の森林における目標植生を定め、構成樹木の健全度や倒壊危険度判定を専門の立場から適切に行い、剪定は必要最小限に留める必要がある。腐朽病害の蔓延を防ぐため、斜面林以外の樹木(とくに街中の街路樹)の健康管理にも十分留意する必要がある。
- 急斜面地では、根系支持力と萌芽能力をともに備えた樹種を生かし、地上部重を抑えながら萌芽林として維持管理することも一案である。シラカシ、アラカシ、ケヤキはその際の有望な樹種に挙げられる。
- 「樹木で斜面を保持する」のではなく、「森林で斜面を保持する」という発想が必要である。下層植生が貧弱な斜面林では、根系支持力や土壌緊縛力に富んだ郷土樹種の幼苗を育成し、補植することが有効である。
4 まとめ(レジメより)
- 緑を知るには、まず、植物を知ることが大切。
- 緑の評価について:緑をさらに深く知るため、目的に応じた数々の評価方法が知られている。市内に残された緑地(とくに森林)については、自然性、有用性、環境保全面の視点から多角的に評価し、既存緑地の評価を見直す作業が重要である。
- 今後の植生管理について:目標とする植物社会のイメージ(種組成・構造の情報)を定め、植生管理における作業内容を一つ一つ具体的に検証することのできる「作業/モニタリング計画」をつくり、現場の作業に活かすことが望ましい。
(質問)
- 木の名前をどの程度知っていればよいか。
神奈川県でいうと2,000種もあり、自然林を重視すればケヤキ、シラカシ、アラカシ等は知っていた方がよい。 - みどり率、樹林率はどのように出したのか。
航空写真などから面積を調べ出したのでしょう。 - 街路樹が枯れているものもある。どうすればよいか。
街路樹は生物であり、人工構造物ではない。そういう管理が必要。 - モニタリング計画をつくり、とあるがどこに頼めばよいか。
大学なり、NPO、民間の団体等に相談するのもよい。植物の立場で、植物を生かす方向で考え検討することが大事。
(記録:環境学習講座スタッフ 長濱 自明)
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