メニューにジャンプコンテンツにジャンプ
昭島市

論文

更新日:2019年9月27日

  • 論文表紙
  • 裏表紙

論文発表に至る経過

アキシマクジラの化石は、昭和36年8月に発見され国立科学博物館(新宿分館)にて調査、保管後、平成24年3月に群馬県立自然史博物館に移送されました。
同館において調査、研究が進められ、コククジラ属の新種のクジラであるという研究論文がまとめられ、平成29年3月に日本古生物学会に正式受領されておりました。
その後、平成30年1月1日に同学会英文誌に掲載されたことにより、アキシマクジラが正式に新種の個体として認められ、学名も付与されました。

掲載誌

日本古生物学会 学会誌(英文)
「Paleontological Research」(Vol.22No.1 2018.1.1発行)
パレオントロジカル リサーチ
日本古生物学会(出版物ページ)(外部サイトへリンクします)

論文名

A new species of the genus Eschrichtius (Cetacea: Mysticeti)
from the Early Pleistocene of Japan

日本の下部更新統産コククジラ属(クジラ類:ヒゲクジラ亜目)の新種

研究者

木村 敏之 群馬県立自然史博物館 主幹学芸員(理学博士)

長谷川 善和 群馬県立自然史博物館 名誉館長(理学博士)

甲能 直樹 国立科学博物館 地学研究部生命進化史研究グループ長(理学博士)

研究者 3名の顔写真
写真左 木村主幹学芸員
写真中央 長谷川名誉館長
写真右 甲能地学研究部生命進化史研究グループ長

学名

Eschrichtius akishimaensis
エスクリクティウス アキシマエンシス
(模式標本番号 GMNH-PV-3210)

注:学名はラテン語なので本来はイタリック体ですが、ホームページのアクセシビリティ上表記できません。

アキシマクジラの論文の要約

専門的な用語・議論が多く含まれるため以下直訳ではなく概要を述べるに留める。

―群馬県立自然史博物館 木村学芸員―

論文

タイトル

A New Species of the Genus Eschrichtius (Cetacea: Mysticeti)
from the Early Pleistocene of Japan

日本の下部更新統産コククジラ属(クジラ類:ヒゲクジラ亜目)の新種

要旨(Abstract)

コククジラ科は、現在ではコククジラ(Eschrichtius robustus)の1種のみが北太平洋に生息している。コククジラ科の化石記録は、比較的少ないため、彼らのたどってきた進化の道筋については不明な点が多い。
1961年、東京に分布する前期更新世の地層(177-195万年前)よりヒゲクジラ類の化石が発見された。この化石は頭蓋や下顎骨などほぼ全身の骨が保存されている。
この論文では、この化石標本について新種のコククジラ類
Eschrichtius akishimaensisとして報告する。
E. aksihiamensisは、コククジラ属としてはじめて報告される化石種であり、アキシマクジラの発見によって前期更新世では少なくともコククジラ属2つの系統が生き残っていたことが示唆される。今回の発見によりコククジラ類がたどってきたこれまでの進化の道筋についての新たな情報が明らかとなった。

はじめに(Introduction)

コククジラ科は、不明な点が多いクジラ類のグループで、現在では1種のみが生き残っているに過ぎない。近年の研究によって、彼らの過去の生物多様性については明らかになりつつあるが、コククジラ科の化石記録は比較的少なく、依然として彼らがたどってきた進化の道筋については、不明な点が多く残される。
現在生息しているコククジラEschrichtius robustusは、北太平洋に分布している。現生コククジラは3つの個体群が認識されている

  1. 比較的個多数の多い北太平洋東部系個体群
  2. 非常に個体数が少なく絶滅の危機に瀕している北太平洋西部系個体群
  3. 絶滅した大西洋個体群

コククジラ属Eschrichtiusの最古の化石は、後期鮮新世から見つかっているが、種までは同定されていない。また化石記録は限られ、現在生息するコククジラがどのように進化の道筋をたどってきたのかについては不明である。
1961年8月20日、ほぼ完全なヒゲクジラ類の化石標本が田島政人氏とその息子の田島芳夫氏によって、東京都昭島市を流れる多摩川の河床にて発見された。その後、この化石は尾崎博(国立科学博物館:当時)らの指導のもとに多くの地元の方によって化石の発掘作業や剖出作業が進められた。
1962年には、尾崎・昭島地学研究会によって化石の産出について日本地質学会において学会発表(東京都昭島市の鯨化石の産状について)が行われ、1966年には昭島地学研究会によって予察的な報告(アキシマクジラ調査概要)が発表された。また発見者である田島によっても1994年にアキシマクジラについての書籍が発表されている(アキシマクジラ物語)。
このクジラ類化石は、長年にわたって“アキシマクジラ”として呼称されてきたが、これまで正式に記載されていなかった。本論文ではこの化石について記載し、分類学的な検討を行うことを目的としている。

記載(Systematic description)

Mammalia Linnaeus, 1758哺乳類
Cetartiodactyla Montgelard et al., 1997鯨偶蹄類
Cetacea Brisson, 1762クジラ類
Mysticeti Gray, 1864aヒゲクジラ類
Family Eschrichtiidae Ellerman and Morrison-Scott, 1951コククジラ科
Genus Eschrichtius Gray,1864bコククジラ属

模式種(Type species)

Eschrichtius robustus(エスクリクティウス ロブスタス)
現生のコククジラ

本標本がコククジラ科であることを示す主な形態的特徴(Emended diagnosis of the genus)

  • 鼻骨のサイズが非常に大きい
  • 頭頂部で前頭骨が背面に露出している
  • 下顎骨の筋突起が非常に小さい

エスクリクティウス アキシマエンシス 新種(Eschrichtius akishimaensis sp.nov)
現生コククジラと区別される形態的な特徴 (Diagnosis of species)

  • 前上顎骨上行突起の背面が平らである
  • 上顎骨上行突起の背面は斜め上方向に面しており、前上顎骨上行突起と同じくらいの幅である
  • 鼻骨の外形が四角形状である
  • 鱗状骨には深いくぼみ【鱗状骨陥凹(squamosal concavity)】が発達する

模式標本(Holotype.)

GMNH-PV-3210。頭蓋、下顎骨、頸椎、胸椎、腰椎、尾椎、V字骨、肋骨、肩甲骨、上腕骨、橈骨、尺骨、手根骨、中指骨、指骨。
模式標本は田島政人・田島芳夫によって1961年8月20日に発見。

模式地(Type locality.)

東京都昭島市の多摩川河床。JR八高線の多摩川にかかる鉄橋の第11番橋脚からおよそ30m下流の地点。

産出層・年代(Formation and Age.)

上総層群小宮層、前期更新世(およそ177-195万年前)。

種名の由来(Etymology.)

標本の発見地である昭島市に由来。

備考(Remarks.)

アキシマクジラについては"Japonocetus akishimensis"という名称がいくつかの文献でこれまで示されているが、いずれも命名規約則ったかたちでの報告はなされておらず、無効である。

標本の記載

保存されている各部位についての記載 省略

議論(Discussion)
現生コククジラにおいて見られる形態変異について(Intraspecific variation among Eschrichtius robustus)

現生コククジラに見られる個体館の変異について議論し、アキシマクジラと現生コククジラの間で見られる形態的な相違が同一種内での変異ではなく、系統の異なる種レベルでの違いであることを議論。

専門的な用語が多く、詳細については省略

コククジラ属の化石記録について (Fossil record of the genus Eschrichtius)

これまでにいくらかのコククジラ属の化石/半化石標本が大西洋・太平洋域から報告されている。最古のコククジラ属の化石はIchishima et al。(2006)によって報告された北海道から発見された標本である(およそ380-260万年前)。ただし、この標本は不完全な頭蓋などからなる標本であり、そのため詳細な分類学的位置づけは行われてない(コククジラ属の一種(Eschrichtius sp)として報告されている)。この北海道産の標本についての詳細に議論することは本論文の主旨を越えるが、少なくとも鱗状骨に見られる深いくぼみの発達はアキシマクジラのみで見られることから、北海道産の標本とアキシマクジラとは区別される。
Barnes and McLeod(1984)はカリフォルニアのおよそ20-30万年前の地層からコククジラ属の化石を報告している。
Barnes and McLeod(1984)は”この標本は現在生息しているコククジラE. robustusと区別される形質を見いだすことは出来ない”としており、したがってこの標本とアキシマクジラは区別される。
それ以外のコククジラ属とされている標本は、いずれも断片的であったり、未記載であったり、あるいは現生種と区別出来ない標本である。これらからアキシマクジラ (E. akishimaensis)は初のコククジラ属に含まれる化石種であり、必然的にコククジラ属の最古の化石種となる。このことは不明な点が多いコククジラ属がたどってきた進化の道筋の一端を明らかとしている。
アキシマクジラは後期更新世の北海道から見つかったコククジラ属標本とは異なる系統であり、さらに現生コククジラとアキシマクジラも異なる系統である。アキシマクジラの発見は、コククジラ属では(アキシマクジラが生きていた)前期更新世までは少なくとも2つの系統が存在していたことが明らかとなった。
将来的な発見によって、現在では絶滅の危機に瀕しているコククジラ属の謎に包まれた進化の筋道が明らかになるであろう。

References 引用文献【略】

お問い合わせ先

生涯学習部 社会教育課 文化財担当(2階4番窓口)
郵便番号:196-8511 昭島市田中町1-17-1
電話番号:042-544-5111(内線番号:2259)
ファックス番号:042-541-4337

メールでお問い合わせ

このページに関するアンケート

情報は役に立ちましたか?
このページは探しやすかったですか?