アキシマクジラ化石発見65周年記念インタビュー
ページ番号1012955 更新日 2026年10月28日

アキシマクジラの化石発見から65周年を記念して、令和8年10月24日(土曜日)まで、昭島市郷土資料室でアキシマクジラの全身の実物化石の特別展示などを行っています。
この特別展示を企画した学芸員の尾﨑 薫さんに話を聞きました。
学芸員の尾﨑さんってどんな人?
学芸員ってどんなお仕事ですか?
学芸員は、博物館や資料館、美術館などで勤務する専門職員です。
考古学、歴史学、民俗学、生物学、地学、美術などの学問の中で、自身が専攻した分野を担当することが多く、勤めている施設のテーマにふさわしい資料や情報を収集します。そのうえで、分析や研究を行ったり、どのように展示すればいいかを考えたりしながら資料の保管・管理に努めます。
昭島市郷土資料室でも数名の学芸員が在籍していますが、私は古生物学・層位学(地層の上下関係や新旧の順序を調べて、地球の歴史や化石の年代を明らかにする分野)を担当しています。
どうして昭島市郷土資料室の学芸員になろうと思ったのですか?
元々、小学生の頃に図書館で読んだ本から太古の地球や生き物に興味はありましたが、大学に進学してから太古の岩石や化石をみつけて調べ、その結果を社会にむけて発信していく楽しみを知りました。
それらの活動に合致した職業として、学芸員の仕事に携わりたいと考えていたところ、多摩川の地層や化石を扱う郷土資料室と図書館の複合施設が昭島市にできる、とのお話を伺いました。
大学時代に昭島市を含めた多摩川をフィールドとして研究してきた経験があり、化石に興味を持つきっかけの一つになった図書館とも密接な施設であると聞いて、何かの縁を感じて、昭島市郷土資料室の学芸員になりました。
尾﨑さんにとって昭島市ってどんなまち?
とても自然が豊かで、水がきれいなまちだと思います。
昭島市をはじめ多摩川流域に位置する多摩地域は、約200万年前から120万年前の地層(上総層群)を基盤に、その上に段丘礫層やローム層が重なり、その砂礫層が露出する崖からは湧水があふれ出すという地勢が、市区町村の境界を越えて普遍的に広がっています。
さらに昭島市は多摩川の旧河道や地下水がとても豊富で、かつては生活用水や農業に、現在は工業にも活かされており、「深層地下水100%の水道水」へとつながる水資源の豊かさがあると感じております。
礫(れき):砂よりも大きく、岩よりも小さな石のこと。小石のこと。
アキシマクジラの魅力
学芸員の尾﨑さんからみたアキシマクジラの魅力を教えてください
「太古に生息していた動物や植物などが化石として残る確率は1パーセントにも満たない」と言われています。日本国内で恐竜の化石がみつかった際に、歯や爪の化石一つを発見しただけでニュース記事を飾ることが少なくないのは、化石自体がみつかる確率がとても低いことにほかならないためです。
以上を前提とすると、アキシマクジラは、ほぼ全身の骨が化石としてみつかっているという点で、世界的に見ても非常に貴重な財産であると思います。
その意味では、昭島市は世界に通用する財産をもっていると言っても過言ではなく、その存在自体が、昭島市の人々に愛されていることも納得できます。
アキシマクジラが昭島市に住む人たちに愛されているなと感じたエピソードはありますか?
昭島市に来る前は、恐竜化石がみつかった福井県勝山市や北海道むかわ町などに長期滞在していたことがあり、まちの至るところに恐竜や化石に関するモノがひしめく光景を目の当たりにしてきました。そのように、実は地元でみつかった化石を使ったまちおこしをしている自治体は珍しくなく、当初は昭島市の人々に愛されるクジラの化石も、その例に漏れないのではないかと感じていました。
しかし、実際に現地を訪れてみますと、マンションや商業施設が立ち並ぶ風景に、案内看板、マンホールの蓋、菓子類、建造物に至るまで「アキシマクジラ」が図案化されて息づいているようすがとても印象的でした。
これらの情景から、アキシマクジラは単なるまちおこしにとどまらず、昭島市の人たちが60年以上かけて「クジラのまち」としてのアイデンティティを内発的に育ててきたことを知りました。それらの意味で、アキシマクジラは市民に心から愛されているのだな、と思いました。
昭島市郷土資料室の企画展
どんな想いで65周年記念イベントを企画したのですか?
アキシマクジラの実物化石の迫力を体感いただきながら、デジタルアーカイブ(主に化石の3Dモデルなど)をご覧いただける内容を考えました。
アキシマクジラは、発見から65年以上が経過した現在においても、世界でたった1頭しかみつかっていない非常に貴重な化石です。当然、適切な環境で、大切に保管する必要がありますが、このことは、アキシマクジラの化石を見るためには、その都度収蔵庫にまで足を運んで化石を持ち出さなければならず、取り回しが良くないことも意味します。何より実物化石の散逸や破損などの万が一の事にも備えなくてはいけません。
そうした背景も踏まえて、実物化石とデジタルを楽しむことができる企画展を開催し、「アキシマクジラは3D化して残していくという取り組みがなされていること」、「インターネットを介して、世界中の人々にアキシマクジラの化石を手にとっているかのようにみていただけること」を広めていく機会にしていきたいと考えました。
アキシマクジラ企画展を開催している昭島市郷土資料室の魅力を教えてください
アキシマクジラをはじめとする多摩川流域でみつかった化石を展示しています。また、多摩地域の豊かな自然を基盤として、太古から現在に至るまでの、昭島の人々のあゆみを物語る貴重な資料を多く展示しています。
昭島市郷土資料室に所蔵している化石や文化財などは、デジタルアーカイブとして動画、3Dモデル、写真、テキストなど、さまざまな形でデジタル化され、その一部を公開しています。現物の資料とデジタル化した資料を合わせてさまざまな形で楽しむことができるのが、当室の魅力であると思います。
今後アキシマクジラを取り上げたイベントを予定していますか
現在は、アキシマクジラは何故全身の骨が化石として残ったかについて、他の博物館や大学と共同で調べています。
この調査・研究をすすめることで、アキシマクジラが死後、浅瀬で砂に埋もれて骨から化石として残るまでの一連の流れが科学的に説明できるようになります。将来的には、アキシマクジラが化石になるまでのエピソードがより詳しく明らかになってくると思います。
また、並行してアキシマクジラの化石も引き続きデジタル化して保全・活用をしていくことを前向きに検討しております。
それらの成果を今後の企画展にてご紹介していきたいと考えております。
皆さんへメッセージ
当インタビューを書いていく中で、1954年(昭和29年)に昭島市が発足して間もない1961年(昭和36年)に発見されたアキシマクジラは、昭島市民にとって、文字通り昭島が生まれてから現在に至るまで、長く共に歩んできたかけがえのない財産であると改めて実感いたしました。
世界にも通ずる財産として魅力や価値を発信していきたい所存ですので、今後ともよろしくお願いいたします。
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